東京大学医学部附属病院 小児科医長の榊原洋一氏が書いた本。

これまでの早期教育の流れを解説しつつ、「早期教育で天才が育つ」という幻想を、一つ一つ丁寧に否定している。

でも、早期教育の完全否定ではなくて、早期教育を否定するためにも人体実験が必要で、そんなことはできないから、早期教育を否定する証明も難しいのだ、というところに納得したし誠実さを感じた。

本の最後は、「子どもたちの発達は、早期教育をやろうがやるまいが、それによって大きく進路を狂わせることがなく、人として生きていくための知識とスキルを獲得するように調節されているのである。」と締めくくられている。

早期教育にハマリそうになった親は読むと頭が冷えていいかも。古本は出回ってるけど、絶版なのが残念。

言語関係について気になったのは、母語の臨界期は7歳くらいまでってところ。ネイティブ並のバイリンガルになるには7歳までの間に、第二言語に接しはじめることが必須だけど、臨界期以降も学習法を工夫することで第二言語の獲得は十分に可能。まあ、そうだよね。

天才の話もへぇ~、っと思った。
知能指数は、知能検査の得点を、その子どもの同年齢の得点の平均で割り、100をかけたものだから、4歳の子供が6歳の平均点を取ると150(天才?)になる。数字のマジックなのねぇ…。
しかも、天才(?)状態を維持できるかは別の問題で、実際に、5歳で高校の数学を解けた天才(?)少年が16歳では普通の成績になったらしい。天才ではなくて、早くに高年齢向けの問題が解けるようになっただけの早熟児だったらしい。本物の天才(常人には解けない問題が解ける大数学者とか)は、別に早くから高年齢向けの問題が解けるようになるものでもないらしい。
天才は早期教育で作ることはできなくて、早期教育で作ることができるのは早熟児なのね。早熟児を天才児と勘違いすると残念な結果になってしまうワケだ…。

早期教育が子どもの発達に及ぼす弊害の可能性には2つの種類がある。
1、臨界期に過剰な刺激が加わると、脳の発達のプログラムが障害される可能性がある。
2、早期教育への過度の期待が、子どもに大きな身体的・精神的ストレスを与えてしまう可能性がある。

やっぱり一番怖いのは、過度の刺激で発達障害になっちゃうことだよなあ。でも人体実験できないから、ここんところの証明が、難しいわけだ…。

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一方で、やっぱり早期に文字が読めるようになってたくさん絵本(日本語)を読んだ子が優秀に育つって例もネットでちらほら見るんだけど、本人が好きで自発的にってところが最重要ポイントなのかなぁ…。

まあ、天才は放っておいても、天才だしね。天才だからって人生100%成功するわけでもないし。凡才なら凡才らしくじっくり育てるしかないってことね。